陶芸教室が入っている銀座参番館ビルの1階は、奥村書店という古本屋さんです。芸術関係の図書が充実している古書店ですが、料理関連の珍しい本も並んでいます。先日この古書店で、平野雅章氏の日本料理探求全書の第三巻『日本料理孝』を購入しました。
おおざっぱに言えば、日本料理の基礎的な知識を解説した本です。その昔「魯山人の愛弟子」という肩書きで『料理の鉄人』に出演していた平野氏らしく、蘊蓄に満ちた一冊。その冒頭は「天ぷら」で始まります。
天ぷらはどのように揚げ、どのように食べれば美味しいのか。家庭で美味しい天ぷらを食べるにはどうすれば良いか。そんなことが書かれていて勉強になります。
まず油をおごること、油は良質のものを使うこと、粉は薄力粉を使用すること、鍋に留意すること・・・。そして最後に「おいしく食べるには」という項目があり、「揚げたての熱々をすぐ食べる」こと、と書かれています。
そうなんですよね。天ぷらはやっぱり揚げたてが一番。それもお店で、できればカウンターで揚げ手と対面しつつ食べるのが何よりです。こればかりはどう頑張っても家では味わえない旨さです。
朝っぱらからそんな下りを読んでしまったせいか、昨日は一日中頭の中が天ぷらモード。折しも午後は夫・さん生と芝居を見に行く予定があり、舞台が跳ねたの夕方4時過ぎ。さて夕飯はどうしたものかと二人で思案の末、行ってきました。上野は天寿ゝ(てんすず)。
夜の部開店とほぼ同時に入店したので、お目当てのカウンターはもちろん空いていました。一番奥の席に陣取って、まずはビール。そして天ぷら屋さんと言えば、天ぷらもさることながら刺身です。天ぷら屋さんはお寿司屋さん同様、ネタが命ですから、美味しいお刺身が必ず入っているのです。昨日は戻りがつおの美味しいところをいただき、日本酒を一献。
ちょいといい気持ちになったところでいよいよ天ぷらです。昨日いただいたのは、まずは海老。香りよく揚がった身を食べ、あとで添えてくれる頭の部分ももちろんぱくっといただきます。そしてはも。こちらは「はも子」の煮たのがちょいとついて、お酒がさらに進みます。
この他、子持ち鮎、イカ、穴子、茗荷、インゲン等々、何ともはや贅沢な一夜を過ごしました。
家でじっくり手をかけた食事を摂るのも好きですが、ときには外食も良いものです。一人で料理を作っていると、同じようなメニューに方よりがちですが、たまに外で食べると刺激にもなり、発想の転換にもなります。また、サービスの本質についても考えさせられます。たとえ一個人の家庭であっても、家に来るお客様に気持ちよく食事をしていただきたいものだと思います。
大いに満足し、満腹でたどる帰り道。美味しいものは人間を幸せにするんだなあ、と痛感。食べるものだけはおろそかにしたくないな、と改めて感じ入って夜でした。

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